40 「さかなクン」の母に学ぶ、子どもを信じて伸ばす方法

「うちの子は、好きなことばかりで勉強に見向きもしない」
そんな不安を感じたとき、多くの保護者の方が思い出すのが、魚類学者でタレントのさかなクンと、そのお母さまのエピソードではないでしょうか。
さかなクンは、東京海洋大学の名誉博士・客員教授を務め、「海洋立国推進功労者」として内閣総理大臣賞も受賞しています。小学校の卒業文集に書いた「水産大学の先生になること。研究したことを、みんなに伝えてあげたい」という夢を、そのまま現実にした人です。
その原点にあったのが、お母さまの「子どもを信じて、好きを止めない」という姿勢でした。
この記事では、さかなクンのお母さまの子育てエピソードから、子どもの「好き」を伸ばすために親ができる関わり方を解説します。
「好きなことばかりして勉強しない」「周りの子と比べて不安」と感じている方にも、今日から取り入れやすいヒントをご紹介します。
さかなクンのお母さまが実践した5つのエピソード
1. 4歳、ゴミ収集車を追いかけた日
魚に夢中になる前、幼いさかなクンが心を奪われたのは、トラックやゴミ収集車でした。
「ゴミ収集車が見たい」とせがまれたお母さまは、なんと車でゴミ収集車の後ろをずっとついて走ってあげたといいます。さらに、たくさんの収集車が並ぶ場所へ連れて行き、日が暮れるまで眺めるのに付き合ったというエピソードも語られています。
「そんなもの見てどうするの」と言われてもおかしくない場面です。けれどお母さまは、子どもが何に心を動かされているかを、そのまま受け取りました。
2. 小学2年生、タコに夢中になった日
転機は、同級生が描いた1枚のタコの絵でした。
その魅力にとりつかれたさかなクンのために、お母さまはぶつ切りではなく丸ごとのタコを買い与えます。その日から、頭の中はタコのことばかり。水族館へ行けば、タコの水槽の前から動かず、閉館時間まで見続けたそうです
やがてお土産に渡された魚の下敷きがきっかけで、興味はタコから魚全体へと広がっていきました。今の「さかなクン」が生まれた瞬間です。
3. 学校から注意されても、揺るがなかった一言
授業中も休み時間も魚の絵ばかり描いていたさかなクンは、当然ながら勉強にはついていけません。家庭訪問で担任の先生から「絵はすばらしいけれど、勉強もするように」と注意されました。
そのときのお母さまの返答が、多くの人の心をとらえています。
あの子は魚と絵が好きだから、それでいいんです。
「将来お子さんが困りますよ」と言われても、答えは変わりませんでした。成績のよい子もそうでない子もいていい、みんな同じならロボットになってしまう——。そう伝えたといいます。
「先生に何と言われるか」ではなく「この子は今どうなのか」。お母さまが見ていたのは、常に子ども本人でした。
4. 失敗を、先回りして止めなかった
お母さまは、手を貸さない人でもありました。
料亭の水槽にいた魚を「1匹ください」と交渉したのは、幼いさかなクン本人。出てきたのが刺身になった魚だったため大泣きしたときも、お母さまは後ろで見守るだけだったといいます。水槽を置いて畳を傷めてしまったときも、叱るのではなく淡々と受け止め、誕生日には新しい水槽を買ってくれたそうです。
失敗すると分かっていても、先回りして止めない。それは「失敗は取り返しがつくもの」と、身をもって教える時間でもありました。
5. 口ぐせは「命がとられるわけじゃないんだから」
お母さまの口ぐせは、こんな言葉でした。
命がとられるわけじゃないんだから。
この一言に、さかなクンは「失敗しても大丈夫だ」と救われたと語っています。
高校卒業後、進路に迷ったとき。仕事が続かず悩んだとき。親戚や周囲から「甘いのではないか」と言われても、お母さまはさかなクンにその不安をぶつけることはありませんでした。ただ、信じて応援し続けたのです。
そして10年ほど前、お母さまから贈られた言葉は「自由に泳がせたら、本当にお魚になったね」でした。さかなクン自身が、涙とともに語っているエピソードです。
エピソードに共通する「子どもを信じる」5つの軸
一つひとつは特別な出来事に見えますが、貫かれている考え方はとてもシンプルです。
共感する
- お母さまの行動:一緒にタコを面白がった
- 家庭での置きかえ:「すごいね」より「お母さんも好きになってきた」
待つ
- お母さまの行動:閉館まで水槽の前で付き合った
- 家庭での置きかえ:満足するまで区切らない時間を1日15分でもつくる
本人を見る
- お母さまの行動:先生の評価より子どもの姿を優先した
- 家庭での置きかえ:他人の物差しで判断する前に、本人の様子を見る
失敗させる
- お母さまの行動:手を出さず後ろで見守った
- 家庭での置きかえ:明らかな危険がなければ、やらせてから振り返る
安心を渡す
- お母さまの行動:「命がとられるわけじゃない」と伝え続けた
- 家庭での置きかえ:挑戦の前に「失敗しても大丈夫」を言葉にする
とくに大切なのが、1つめの「共感する」です
子どもの「好き」に対して大人ができる反応は、大きく3つに分かれます。否定する・許可する・一緒に楽しむ。このうち子どもの意欲がいちばん伸びるのは、3つめです。さかなクンのお母さまは、許可を出す側ではなく、いつも一緒に面白がる側にいました。
家庭で今日から真似できる3つの関わり方
「なんで好きなの?」ではなく「どこが好きなの?」と聞く
「なんで」は理由を説明させる質問で、子どもは答えに詰まりがちです。「どこが」なら、好きなものの魅力をそのまま語れます。話すうちに、子ども自身が自分の興味を言語化していきます。
中断させるときは、予告してから
夢中になっている時間を突然切られると、「自分の興味は大事にされない」という感覚が残ります。「あと10分でごはんね」と予告するだけで、子どもは納得して切り替えられるようになります。
学校での評価と、家庭での評価を分ける
学校は集団の中での基準で子どもを見る場所です。家庭まで同じ物差しになってしまうと、子どもには逃げ場がなくなります。さかなクンのお母さまがしていたのは、まさに家庭を「そのままでいい場所」として守ることでした。
「うちの子は何にも夢中にならない」と感じたら
さかなクンの話を読むと、「夢中になれるものがある子は特別だ」と感じるかもしれません。
けれど、さかなクンの興味も泥だんご、トラック、ゴミ収集車、タコ、魚……と移り変わってきました。最初から魚だったわけではないのです。
大切なのは、興味の対象ではなく、夢中になる回路そのものを育てること。一つのことに没頭し、満足するまでやり切る経験を重ねた子は、対象が変わっても同じように深く取り組めます。
夢中になれるものが見つからないときは、対象を探すよりも、選ばせる機会を増やすことをおすすめします。
「今日の絵本、どっちにする?」「公園と図書館、どっちに行きたい?」など小さな選択の積み重ねが、「自分で決めていい」という感覚を育て、やがて自分から夢中になる力につながっていきます。
まとめ|信じることは、子どもの安心の土台になる
さかなクンのお母さまがしていたのは、特別な英才教育ではありませんでした。
・子どもの「好き」を一緒に面白がる
・満足するまで待つ
・他人の評価より、本人の姿を見る
・失敗を先回りして止めない
・「失敗しても大丈夫」と伝え続ける
この積み重ねが、「自分は自分のままでいい」という自己肯定感を育て、好きを究める力になりました。
幼児教室コペルでは、知育とあわせて心を育てる「徳育」に力を入れ、子ども一人ひとりが持つ可能性を引き出すレッスンを行っています。お子さまの「好き」や「やってみたい」を伸ばす関わり方にご興味のある方は、ぜひ無料体験レッスンでコペルのレッスンをご体験ください。
この記事の監修者
監修者プロフィール
大坪 信之 (おおつぼ のぶゆき)
株式会社クラ・ゼミ 顧問
コペルメソッド エバンジェリスト
1963年福岡県生まれ。 幼児教室コペル共同創業者・ コペルメソッドエバンジェリスト。 福岡大学人間関係論非常勤講師。 一般社団法人徳育学会会長。 日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー。 ユネスコ Inclusive Policy Lab専門家。
幼児教室コペルの創業以来、 30年以上にわたり心の教育を志し、 様々な研究に取り組み続けている。



